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フェード現象とベーパーロック現象、ぺーパードライバーが知っておきたい知識

2022年10月13日、富士山麓の下り坂でバスが横転して乗客1人が死亡、26人が重軽傷を負った事故が起きました。バスの運転手は「ブレーキが利かなかった」と語っていると言います。まだ断定はできませんが、運転手の証言が正しいとすると、ブレーキを踏んでも利かなくなる「フェード現象」「ベーパーロック現象」などによる事故と推定されます。

この事故原因はクルマを作る技術の進歩が大きく関係しているため、昔の方が多く起こっていて、そのため昔は急な下り坂が続く道路では、ブレーキが利かなくなった時に使用する「緊急退避所」が設けられていたりします。首都圏では、箱根新道の下り路線に現在でも見られます。「緊急退避所」は、万が一ブレーキが利かなくなってしまった場合にクルマで突っ込むと、砂地になっているため減速して衝撃も和らげて停止させる仕組みです。

もし「緊急退避所」がない場合にはどうしたらよいでしょうか? ミッションを出来るだけ低いギアに入れてエンジンブレーキで減速し、クルマの側面をガードレールや壁に擦りつけて減速停止をさせる手立てしかありません。ブレーキが利かなくなるフェード現象とベーパーロック現象は大変怖い現象で、ぺーパードライバーなら必ず知っておきたい、安全に大事な知識です。どちらともブレーキが利かなくなってしまう現象で、事故になること確実です。

では、どうしたらフェード現象とベーパーロック現象を防げるでしょうか? これは、「運転方法」で必ず防げる故障です。ブレーキの構造を理解していれば運転方法が変わり、事故に至らなくて済みます。

アクセルとブレーキペダル、ハンドルがクルマの運転に必要は基本の3大要素です。この操作が上手にできるのが運転上手です。そして、はやく運転上手になるコツは運転練習する前に「クルマの構造」を知ることです。クルマの構造を頭に描いて操作するのと、構造を知らないで操作の練習するのでは、上達の速度も理解の深さも「天地の差」が出来てしまいます。

そこで、この記事では、
・フェード現象とべーパーロック現象とはどんなことか、
・クルマの基本3大要素で一番危険回避に必要なブレーキについて、その構造を理解し、どの様に操作すべきか、
を理解してしみましょう。

1:フェード現象はペーパードライバーが気付かないブレーキ過熱で起きている

ペーパードライバーであっても、「フェード現象」についてはよく知っておきましょう。簡単に言うと、「フェード現象はブレーキが過熱してしまって起きる」現象です。

もともとブレーキは、摩擦によってスピードを殺して車を止める働きです。そこで、ほとんどクルマでは「道路と車体の接点」であるタイヤの中にブレーキは付いています。道路を擦りつけるわけにもいかず、タイヤについて回っているディスクやドラムにブレーキパッドを「油圧ピストン」で押し当てて減速させます。だから摩擦で熱が発生するのです。

「運動エネルギーを熱エネルギーにして放出している」とも言えます。つまり、エンジンやモーターで車体を加速させ、それにブレーキをかけて熱エネルギーとして放出してしまっているのです。これはエネルギーのムダでもあり、そこで車が走る運動エネルギーを使った「回生ブレーキ」などが考えられています。

スピードが速くて加減速も激しいカーレースを見ていると、レースカーのブレーキが真っ赤になっているのが見えることがあります。レースでは特殊なブレーキパッドを使っているためかなりの高温に耐えられるのですが、市販車のブレーキパッドでは、鉄が赤くなるほどになると摩擦が起きなくなってしまい、パッドが滑ってブレーキが利かなくなります。これを「フェード現象」と呼んでいます。

なので、「ブレーキを使いすぎるとフェード現象が起きる」と言えます。街中ではフェード現象を起こすほどブレーキを多用することはほとんどありませんが、長い下り坂が続く山道などで、ブレーキを踏みすぎると過熱してフェード現象が起きやすくなるので気を付けましょう。例えば、「箱根の下り道」「六甲山の下りの坂道」などです。

そして、さらに熱が増してくると、恐ろしい「ベーパーロック現象」が起こります。

2:ぺーパードライバーにとって下り坂は難しい! だらだらブレーキはフェード現象に直結

もともとクルマの運転テクニックでは、下り坂が難しいと言われます。ペーパードライバーや初心者ドライバーであれば、長い下り坂の運転に怖さを覚えた方もいるのではないでしょうか。街乗りの場合のような平らな道では、アクセルを離してしまえばだんだんスピードは落ちてきます。でも下り坂の場合、アクセルを離しても逆にスピードが増していくので怖いのです。そこでブレーキを踏まなければなりませんが、ブレーキの使い方が悪いと事故に繋がってしまいます。

ブレーキの使い方が悪い例は、下り坂で運転中、ずっとブレーキを踏みっぱなしにしていることです。ペーパードライバーでなくても癖になってしまっている人もいます。でも、このような「だらだらブレーキ」は、ブレーキを過熱させてしまい、「フェード現象」を誘発して事故の元となるのでやめましょう。

そのため、「安全に下りのワインディングロードを全力で走れるようになる」と、「一人前にクルマの操作が出来るね!」と言われてきました。

上り坂ではアクセルを踏めば加速し、アクセルを離せば減速します。上り坂では操作がしやすいのです。下り坂でアクセルを離しても加速してしまう場合、思ったスピードに保つには適切にブレーキを使う必要があり、フェード現象を越さずに、常に自分が希望する速度に保つためのブレーキの使用法を習得しておかねばなりません。

※運転全般でのポイントを考えると、これに加えて「首都高速道路を何気なく走れれば免許皆伝」と言えます。それは運転のもう一つのポイントは「他車との関係」にあるからです。つまり「自分が希望する速度で自由に走れる」ことが第一のポイントで、第二のポイントは「他車との関係」をスムーズに保ちながら走れることだからです。

首都高速は狭く混雑して、しかも車の流れが交差することが多いので、他車の邪魔をせずスムーズに自分も走ることが難しいのです。運転が上手な人は、他車の邪魔になる運転はせず、それでいて混雑した中でもスムーズに走り抜けるのです。

フェード現象を起こす可能性がある下り坂に話を戻しましょう。

もし下り坂を車の流れに沿って走りたい場合では、安全な速度でカーブに入ることが出来る判断が必要です。下り坂のカーブの入り口では、オーバースピードで入ることは最も危険なことなので、ブレーキを踏むタイミングがたいへん難しいです。そしてその時、ブレーキをどの様に踏むのかでフェード現象を起こしてしまうか否かが決まります。最も危険な運転が、踏みっぱなしの「だらだらブレーキ」です。

3:ドラムブレーキとディスクブレーキ、どっちが良いのか?

ペーパードライバーの皆さんは、タイヤについているブレーキの種類をご存じでしょうか?

車のカタログでブレーキの型式をいろいろ見てみると、現在の一般的な乗用車、ミニバン、SUVでは「ディスクブレーキ」が多いでしょう。前輪に限ってみると、ディスクブレーキでないクルマを見かけません。

でももう1つ、「ドラムブレーキ」もあります。ブレーキの構造では「ドラムブレーキとディスクブレーキ」の特徴を知っておけば運転がうまくなり、フェード現象など起こさない運転が出来るはずです。

つまり、ブレーキはパッドを擦りつけて減速するため「発熱するのが働き」であり、その熱が危険であるのを知ることです。それで前輪には「放熱性」の高いディスクブレーキが使われています。ブレーキをかけると、前輪には全車重がかかり、全般に後輪に比べて前輪ブレーキに負荷がかかります。そのため前輪ブレーキが発熱しやすく、ドラムブレーキより放熱性の高いディスクブレーキを前輪に使うのです。

※参考:ディスクブレーキとドラムブレーキは何が違うのですか?(JAF)

ドラムブレーキの構造を見ると、「ドラム」の名の通り、密閉されたドラムの中で摩擦材(ブレーキシュー)がタイヤ側についているドラムに擦れて減速させていることがわかります。密閉されているために放熱されにくく、温度が上がりやすいのです。一方、ディスクブレーキは、ディスクがむき出しで空気にさらされています。そのため放熱性がドラムブレーキより高いので、フェード現象を起こしにくいのです。

ドラムブレーキは放熱性が悪いのですが、ドラムの内側に広く摩擦材を当てて擦ることが出来るので「ブレーキの利きが良い」と言えます。でも水に弱いこともあって、放熱性の良いディスクブレーキが主流となっていきました。一方、ドラムブレーキはコストダウンに有利でブレーキの利きも良いので、あまり高速走行を必要としないクルマに使われています。

なので、ドラムブレーキが装着されているクルマこそ、ブレーキの踏み方に注意が必要です。例えば、トラックなどでは未だにドラムブレーキを使っている車両が多いので、バスなどでも乗用車などと同じような感覚で運転しない注意が必要です。

4:ベーパーロック現象、フェード現象は熱で引き起こされる

ペーパードライバーの皆さん、そろそろブレーキの構造がわかってきたでしょうか。次は「ベーパーロック現象」についてです。
ベーパーロック現象は、フェード現象を起こすほどブレーキが熱を発生している時、ブレーキパッドを押し当てるための油圧のブレーキオイル(ブレーキフルード)が沸騰して気泡となり、油圧が働かなくなることです。

ブレーキペダルを踏むとブレーキが作動しますが、足で踏んだ力を伝達するのが「油圧」です。「油圧」は、「液体の体積は圧力をかけても縮まない」特性を使って、パイプの中にオイルを封じ込めて力を伝達する方法です。油圧は広く多くの機械で利用されており、自動車はもちろん飛行機や工作機械、建設機械などにも使われています。また、油圧シリンダーの直径を調整することで、力を増したり減じたりもできます。

現在は、油圧ではなく電動に置き換わってきている部分もあります。「フライ・バイ・ワイヤー」「ドライブ・バイ・ワイヤー」などと呼ばれています。機械の作動をコンピュータ制御する時、多くはサーボモーターを使うからです。クルマでも、アクセルペダルを踏んで、コンピュータを介してエンジンの回転数を制御するときなど、電動であれば細かい制御が可能で、さらに燃費向上に寄与するのです。

現在のクルマでは、「ハンドリング」を調整するため、自動的に「微妙にブレーキを摘まむ」制御が取り入れられており、後輪ブレーキもブレーキパッドの減りが、運転の仕方いかんでは早くなっています。しかし、ブレーキは電動でも、最終的には油圧を介してパッドを動かしているクルマがほとんどです。

そのためブレーキの「油圧」は大切ですが、そのオイルが熱で沸騰してしまい、油圧パイプの中に気泡が出来て緩衝材となってしまい、ブレーキペダルを踏んでもその力が伝達されず、ブレーキが利かなくなるのがベーパーロック現象です。

ほとんどの場合、最初にフェード現象によってブレーキが効きにくくなり、そのままブレーキを使い続けるとベーパーロック現象を併発して、完全にブレーキが利かなくなってしまいます。

最近のクルマでは、なかなかフェード現象もベーパーロック現象も起こしにくくなってきていますが、それでも大変危険な故障であることは変わりありません。

ペーパードライバーであっても運転方法によって事前に予防することは容易です。次は、「フェード現象、ベーパーロックを起こさない運転テクニック」を考えていきましょう。

5:フェード現象、ベーパーロック現象を起こさない運転テクニック

では、どうすれば「フェード現象、ベーパーロックを起こさない運転」が出来るのでしょうか? ペーパードライバーに限らず、クルマを運転するすべての人が知っておきたい知識です。

まず、「フェード現象もベーパーロックも」熱によって起こる現象であることはわかりましたよね。つまり、原因が特定できています。それでも、クルマの構造を技術的に工夫することで、完全に防ぐことが出来ないでいるのです。だから、運転テクニックでカバーするしかないのです。

そこで、
① 熱を発生させない運転
② 放熱効率を上げる運転
③ 熱に強い部品を使う
の3つの方向の努力をすればよいので、この方法を具体的に意識しておきましょう。

① 「熱を発生させない運転」とはどういう運転?

簡単に言えば、「ブレーキを使わない」運転です。言い換えると、フットブレーキ(ブレーキペタル)を使わなければ、熱は発生しません。でも、ブレーキを全く使わずに停止することはできません。ブレーキとは「減速し停止させる機構」です。なので、フットブレーキを踏まないわけにはいかないのですが、踏むことをできるだけ減らし、使い方を工夫します。

フットブレーキが必要なのは、完全に停止する時と減速する時です。このうち減速させる時にはフットブレーキの他に、「エンジンブレーキ」があります。エンジンブレーキは減速できますが、完全停止は出来ません。

「エンジンブレーキ」とは、現在走っているスピードに必要なギアよりも低いギアを選び、エンジンが走る動力としてけん引するのではなく、逆に抵抗となってブレーキとして利くようにする方法です。エンジンブレーキの使用でかなりのフットブレーキの使用が抑えられます。

加速してしまうほどの急な坂道では、エンジンブレーキで減速して、それでも加速するようであればフットブレーキを断続的に踏みます。ブレーキを使えばフェード現象の原因になる発熱は避けられないので、連続して踏むのではなく、断続的に使うことでブレーキに「放熱」の機会を与えます。ペーパードライバーに限らず、踏み続ける「だらだらブレーキ」は避けなければなりません。

街乗りの場面でも、ブレーキを軽く踏みながら坂道を下っているクルマを時折見かけますが、これは最悪です。「ブレーキを軽く踏む」と、ブレーキパッドを少々擦り続けることで発熱が続きます。最も熱をため込む結果となり、最悪の結果を生みます。そこで、長い下り坂の道では「フットブレーキは断続的に使う」と覚えておいてください。でも乗り心地は悪くなります。

急な長い坂道では減速にエンジンブレーキを併用し、フットブレーキは「断続的に使う」ことでブレーキに放熱の時間を作ってあげます。ブレーキの構造特性がわかると放熱が大切なことが分かります。なるべく使わずに済むようにエンジンブレーキを使い、どうしても使わなければならない場面では「断続的に使って放熱させる」のです。

※あわせて読みたい記事

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② 放熱効率を上げる運転方法もある

「① 熱を発生させない運転」と関連がありますが、熱を発生することを避けられないのであれば、出来るだけ放熱させる運転を心がける運転方法もあります。それでフェード現象が発生する限界を上げることが出来ます。

放熱効率を上げる運転方法をしたい場合、まず、カーブに差しかかる手前で出来るだけ減速することを心がけます。決してカーブでオーバースピードにならないことです。自分が安心してカーブに侵入できるスピードまで減速します。カーブのR(曲線半径)が判明している場合、またカーブの出口まで見通せている場合などによって、「安心できるスピード」が違うはずです。

※参考:カーブの警戒標識の下にある「R=500」の意味は?(NEXCO東日本)

ブレーキの放熱性を高めるには、まず「ブレーキを使う間隔」を開けることです。当たり前ですが、発熱したブレーキを出来るだけ風に当てて冷ますイメージです。そのため、カーブ手前では短時間でブレーキを使うことを心がけます。そこで、坂道を下っていくときにエンジンブレーキを使って下っていきます。ペーパードライバーは走行スピードそのものを落として運転した方が無難です。

どうしても車の流れに沿って走りたいのなら、直線では安全を確認できるスピードの範囲でスピードを上げ、カーブ手前で「シフトダウン」します。「シフトダウン」とは、その時は走っているギアがトップギアであれば、それを1段以上落としていくことを言います。つまり、エンジンブレーキを使うことを意味します。

これは、AT車でもセレクターを手動で使えばできます。「D」ドライブで走っていることが多いのですが、それを「3」や「2」に落とすのです。

「安全を確認できるスピード」と言うと、「行く先の視界」が十分であるのかが重要です。緊急時ブレーキをかけて間に合うスピードで走ることが原則なので、カーブの先が見えない「ブラインドカーブ」ではかなり減速することが重要です。逆にカーブ出口まで視界が十分であれば、カーブ途中で滑り出さないようカーブ手前で減速しておくことです。

カーブに入ってからオーバースピードと感じてフットブレーキを使うことは大変危険です。なぜなら、その時にブレーキをけるとタイヤの回転が止まり逆に滑り出してしまうからです。そのため、スピンなどを起こしてカーブから飛び出してしまったりします。コーナーに入る手前で減速することを基本としてください。

カーブ手前で減速する時、エンジンブレーキを使いながら、同時にフットブレーキを強めに短時間使います。だらだらと長い時間使わないことがコツです。ブレーキパッドとディスクが摩擦する時間を少なくして、放熱時間を長くするのです。

ペーパードライバーに限らず、下り坂でブレーキを軽く踏み続けながら走っているクルマがありますが、「最悪」です。街乗りでも見かける場合がありますが、このような運転では、周りの車まで危険が及びますので「運転免許試験を合格させないでほしい」と思います。

③ 熱に強いブレーキパッドなどに交換する?

ブレーキの耐熱性能は、ブレーキパッドに使われる摩擦材の材質によってほぼ決まります。街乗りなど標準的な運転方法でフェード現象を起こすことがまずないのが、メーカー純正品のブレーキパッドです。街乗りなど低速時のブレーキ性能を重視しており、またパニックブレーキなどでの危機回避は重視していますが「対フェード現象性能」を優先してはいません。

樹脂、ゴム類、有機系繊維などの有機材が低速性能には有用で、これが逆に熱に対してはあまり性能が高くありません。そのため、ワインディングロード(山道)の下り坂を早く走ろうとすると、ブレーキパッドなどが熱を持って有機材が溶けだし、フェード現象を起こします。その熱がブレーキフルードまで及ぶとベーパーロック現象を起こしてしまい、フットブレーキがほとんど効かなくなってしまいます。

レース用ブレーキパッドを使えばフェード現象が起きる限界を高めることはできますが、逆に、低速時のブレーキ性能が落ちることがあります。

また、レース用ブレーキパッドに交換するのなら、ブレーキディスクも放熱性の良いディスクに変える方法もあります。市販車の標準ブレーキディスクは無垢の鋼材で出来ていることが大多数ですが、「ベンチレーテッドディスク」、つまりディスクの厚みの中をくり抜いて、通風が出来ている放熱性を上げているディスクもあります。

しかし、ブレーキパッドなど部品交換はコストがかかるのと、極端な高速運転に対応するためなので、ペーパードライバーが一般的な運転をするためには全く無意味です。それよりも、ペーパードライバーの街乗りとドライブであれば、ブレーキの踏み方など運転方法に注意して、フェード現象が起きることを防ぐのが大切です。危険な運転をする必要はなく、レーサーまがいの運転はレース場で、レースカーで行うのが安全で楽しめます。

6:EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)などの回生ブレーキについて

ぺーパードライバーの方でもEVを購入しようと考えている方もいるでしょう。
現在普及し始めているEV(電気自動車)の場合、エンジンブレーキはありません。HV(ハイブリッドカー)を含めて「回生ブレーキ」になっています。これは走る車の運動エネルギーを「発電」に使って、蓄電しているのです。モーターでは加速するのに電気を使います。逆に、そのスピードを使ってモーターを発電機として回しバッテリーに蓄電しています。

エンジンブレーキとの違和感がないように、トヨタのHVでは回生ブレーキの利きを少なめにしているようです。日産の「ワンペダル」では0.2Gの加速度にブレーキを設定して、アクセルを離した時には「回生ブレーキ」とフットブレーキをあわせて0.2Gで利かせています。

最近では、「回生ブレーキ」の利きを調整できるクルマが増えています。EVの場合は最大航続距離を出来るだけ伸ばしたいので、「回生ブレーキ」は街乗りでも積極的に使って(蓄電して)走りましょう。でも、回生ブレーキは低速においては利かないので、完全に停止することはできないことを覚えておいてください。また、バッテリーが満充電の場合は利かないのです。

フットブレーキとの「協調ブレーキ」で回生ブレーキが効かない場面でも、「フットブレーキ」で自動的に補っています。つまり、ワインディングロードの下り坂を運転している時、「ワンペダル」操作で回生ブレーキを使って走っているつもりだったのが、バッテリーが満充電となって、フットブレーキつまり油圧ブレーキが作動していて「エンジンブレーキ併用」ではなくフットブレーキのみ作動と同じ状態でなくなっているかもしれません。

すると、フットブレーキの使い過ぎが起こり、フェード現象が起きる可能性が高まります。バッテリーの充電状況や回生ブレーキの状況表示がメーターパネルなどにあるはずなので、EVでワインディングロードの下り坂を飛ばしているような状況では注意が必要です。つまり、バッテリーが満充電の場合、スピードを落とせばよいのです。

「回生ブレーキ」も万能ではないので、EVでもフェード現象、ベーパーロック現象は起こります。回生ブレーキの特性をよく知って、充電状況を確認しながら、やはり「①発熱させない」「②放熱させる」運転を心がけてください。

フェード現象とベーパーロック現象、ペーパードライバーが知っておきたい知識:まとめ

「フェード現象とベーパーロック現象」は怖い現象で、起きてしまうと事故確実となってしまいます。運が良くても、車を壊してしまうことは確定です。ブレーキシステムに限らず、まだまだ車のシステムは完全なものではなく、運が悪ければ事故に遭ってしまう可能性があることを、ぺーパードライバーに限らず運転するならば知っておきましょう。

そこで、ぺーパードライバーは「怖いフェード現象とベーパーロック現象」を絶対に起こさない運転を心がけてください。そのコツは、第一に「スピードを落とす」ことです。第二に「だらだらブレーキをしない」ことです。この2つを守っていれば、現在の自動車製造技術レベルでも「事故」にはなりません。

併せて、自動車メーカーには「シャーシ(ブレーキ)よりもエンジンが速い」、つまり「速く走れるけど止まれない車」だけは作らないでほしいものです。タイヤやサスペンション、ブレーキの性能よりもスピードの出るクルマは作らないでほしいのです。でも、平地の直線道路とワインディングロード(山道)では条件が違いすぎて、技術的に解決できにくいのでしょう。

ですからぺーパードライバーであっても、事故を起こさないために、「クルマの構造」は最低限度理解しておくことが大事です。「クルマの構造」の理解が「運転免許の条件」であってほしいものです。

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